10月7日
御来光・槍ヶ岳下山
10月6日 A
槍ヶ岳と肩の小屋
10月6日 @
上高地〜グリーンバンド
11:32、ついに槍と対峙した。
今まで写真やWebで何度も見て憧れていた景色だけど、やっぱ自分の足で歩いて見ると
全然違う。
今まで歩いてきた道のりも、そこに吹く風も、自分の息づかいさえも、この景色の一部なん
だなぁと思いました。


槍、現る
遥か上空に聳える槍の穂先。
そして今日のゴール地点である「肩の小屋」の赤い屋根が小さく見える。
右の断崖に引っかかるように立っているのが「殺生ヒュッテ」だな。
とにかくこの最高の景観にシャッターを押しまくりです。
その間に僕を抜かして行ったスパッツさんも少し先で写真を撮りまくっています。
このモレーン越しに槍を見たくて、以前から「槍ヶ岳に登るのならば上高地から」と
決めていたほどなのです。
しかし、槍のその鋭角もさることながら、そこに至るまでの眼前から広がる坂道が
物凄いです。
写真ではわかりづらいけど、どんだけ登らせるんだよってくらいの激坂です。

YAMA&槍ヶ岳
よし、行くか。槍の穂先が見えて急に元気が出てきましたよ。
急なガレた登りを一歩一歩踏みしめていきます。
…全然槍は近付いてこないんですけどね。
ジグザグに折り返しながら、それでも急な坂道をゼーゼー言いながら登ります。
空気が薄くて苦しいです。
確実に自分のペースを保たないと確実に酸欠になるね、これは。

「ヒュッテ大槍」との分岐
<坊主岩屋>
11:50 坊主岩屋
坊主とは、1828年に初めて槍ヶ岳に登頂した播(ばんりゅう)上人のことです。
そのときに播隆さんが一泊したのが、この岩屋らしいです。
ちょっと中を見学してみます。


岩屋を覗く
中には仏像が安置されていました。
天然の岩屋としてはまぁまぁ居心地良さそうです。
山小屋が無い時代だったらこの岩屋は非常に貴重な存在になりそうです。
真夏であっても夜はすっごく冷え込みますもんね。
播隆さんは初登頂後も「一般人も槍ヶ岳に登れるように」ってことで何度も
自分自身で足を運んで開拓し、槍の穂先には当時貴重であった鉄の鎖を
設置し、それを見届けてから亡くなったんだよな。素晴らしい人だ。

近付く槍

急勾配を振り返る
おー、槍の穂先が最初に見えてから、何気に結構歩いてきてますねぇ。
満足満足。
…とそのとき。
ふと視界に入った景色を見て「!?」ってなりました。
すごく見慣れた形の山があります。
しかしここは長野県と岐阜県の県境。富山県だって目と鼻の先だ。
どれだけ距離が離れていることやら。
「見えることもある」と聞いたことはあった。しかし自分自身の目で見ることができるとは。
…富士山だぁーー!!


富士山!!
本当に遠くに小さくだけど、あの山の形だけは絶対に間違えない。
雲海の上にほんの10分ほど、確かに日本の最高峰が出現したのです。
うれしいね!いいものが見れた!今日はツイてるかもよ、僕!
強い日差しの中を登る。
意図的に多めに息を吸うような呼吸法に変えてみました。幾分楽になる。
前にも後ろにもポツポツ人はいるが、みんな似たりよったりのペース。
例外なくみんなキツいんだ。それでも上を目指しているんだ。
僕も負けられないな。
すぐ上には「殺生ヒュッテ」が迫ってきた。


殺生分岐
12:12 殺生分岐
この苦しい登り坂でなかなか近付かない槍の穂先に心身ともに疲労し、「殺生ヒュッテ」
に吸い込まれてまったというエピソードをよく聞きます。
その気持ち、痛いほどにわかります。
しかし、まだお昼だし僕は頑張れます。とにかく目指すは「肩の小屋」!
殺生ヒュッテから肩の小屋までは1時間ほどらしい。
"疲労に耐えつつ足を動かし続けて1時間"なのだからちょっとゾッとしてしまうのだけど、
なんにせよ、もう一息なのです。


天空を目指して

うーむ、なかなかシンドい。正直キツい。
ときどき立ち止まってハァハァ肩で息をして酸素を取り込む。
きっと気温は低いのだろうけど、この運動量と紫外線のせいで相当暑い。汗が出る。
ずっと立ち止まっていたいのだけど、それではいつまでも頂上に辿り着けない。
足を出すも止めるも自分の意思。
こりゃもう体力でなく、精神力のバトルになってきたな。負けるもんか。
再び振り返ると、さっき通り過ぎた「殺生ヒュッテ」、そして向こうには「ヒュッテ大槍」が
見えている。
まるで崖に取り付くように立っている山小屋。
こんな高山に小屋を建てるなんて、人間ってすごいよなぁ…。

「ヒュッテ大槍」(奥)と
「殺生ヒュッテ」(手前)
さぁもう「肩の小屋」まで200mくらいだ!
でもたったその200mがどれだけ苦しいか、山に登ったことのある人だったら知っているかと
思います。足が動きませんもん。
さっき「肩の小屋で会ういましょう」と声を掛け合ったスパッツさんとの距離がだんだん開いて
きてしまいましたよ。これはボロ負けですよ。
小屋はすぐ頭上に見えているのに果てしなく遠い。
パンパンになったふくらはぎに最後の力をこめます。

肩の小屋は目前!
<槍ヶ岳山荘>
12:58 槍ヶ岳山荘
肩の小屋に着きました。
玄関先にリュックを投げ捨て、ハァハァしながら呼吸を落ち着ける。
そして周りを見渡す。
小屋の玄関前に設置された柵と絶景を眺めるテーブル。
先客ぼ人やスパッツさんがそこから広がる景色を見ている。
このロケーション、槍岳山荘のホームページから見ていたライブカメラのシーンだ。
4年以上前から何度も見ていたライブカメラの映像、今自分自身で見ることが出来たよ。
…感無量です!

肩の小屋からの穂先
さて、ひとしきり景色を堪能したし、寒くなってきたのでチェックインしますか。
この山小屋は600人以上が宿泊できる巨大施設で、素泊まり5500円、2食つけると8500円。
1000円で翌日のお弁当ももらえます。
僕はもう食料がわずかなので2食付にします。
明日は残ったオニギリ1つで乗り切る予定だから、お弁当はいりません。
「槍ヶ岳山荘」パンフレット
連休の初日だからめっちゃ混雑するかなぁと思っていたけど、どうやら危惧したほどでは
ないらしく、ひとまず2人分のベッドスペースをもらいました。
ま、2人分でも通常のベッドよりかは狭いんですけど、寝返りくらいは打てそうです。
何せ1人分しかないと両肩を床につけて寝ることすら困難になりますからね・・・。


ベッドスペース
玄関フロア
ベッドスペースでゴロゴロしてスタミナの回復を待ちます。
てゆーか眠いので寝てしまいそうです。
僕のスペースの両側に人が来たので、さっそくいろいろ情報交換しておきました。
平湯側から登ってきたカメラマンのオッチャンは、「今年の紅葉はイマイチだー!」と
残念そうでした。なんでも冷え込み不足で色づきが悪いそうで。
確かに色が少しくすんだ印象だったかな。
「でも、そのかわり最高の天気じゃないですか。こんな天気のときに来れただけでも
僕は幸せですよ。」みたいな返答をしたり。
反対側に来た人は富山県から来た"鶴見さん(仮名)"という人で、何度かこの肩の
小屋までは来ているけど、悪天候で穂先には一度も立ったことが無いと言っていた。
おぉ、じゃあ今回は初登頂ですね。
オッチャンが「俺はそろそろ穂先に行ってくるぜ」と準備を始める。
あ、体力回復したので僕も行きます。
山の天気はどう崩れるかわからないから、登れるうちに登っておかないとね。
鶴見さんは後から来るそうなので、ひとまずオッチャンと僕で穂先に挑みます。
13:23 槍の穂先へのクライミング開始

小屋を振り返る
肩の小屋の標高は3080m。槍ヶ岳は3180m。
その標高差は100m。
しかしその100mがドカンと高層ビルのように目の前に立ちはだかっているんですよね。
片道30分の超急勾配。
全ての荷物は宿に置き、ウエストポーチに貴重品だけ入れてきました。
…あ、軍手を宿に忘れた。まぁいいか。
クレイジー・クライマーズ
上の写真をクリックしての通り、ありえないほどの傾斜の穂先に人々が取り付いています。
うわー、ワクワクしてきたよ。
直下には『落石が多くて危険なので、登るなら完全に自己責任で』ということが書いてありま
した。よっしゃ、登りますか。
岩肌は結構ゴツゴツしているので、掴みやすい。
三点確保の基本さえ押さえていれば大丈夫そうです。
しかし眼下は1000mほど下まで一望できる凄まじい展望。
うわー、高所恐怖症だったら100%無理。


オッチャンの後を追う
登るところはペンキでマークしてあるんですけど、どこに手を掛けて足を掛けるかは
自分の判断。ヒャー、ドキドキします。
写真を撮りながら登っているオッチャンの先を行かせてもらう。
オッチャン: 「おーい、そっちはどうだー!?」
YAMA: 「ヤバイっすー!急で怖いっすー!」
みたいな呼びかけをしあいながらキャッキャする。楽しいなぁ、空が青いなぁ!



岩肌に張り付く
日本第5位の山、槍ヶ岳。全ての景色が下に見えます。
どこまでも広がる山々。日本は本当に山の国なんだなぁ…。
一歩一歩、偉大なる槍を噛み締めながら腕を上へと伸ばします。気分は最高。
登り始めておよそ20分。
山頂直下の最後のハシゴが見えてきました。限りなく90度のハシゴ。
これを登れば山頂だ。


さぁ、感動の穂先へ!!
12:50 槍ヶ岳
着いた…。別名『はるかなる天空への祈り』。
憧れていたその先端に立つことができました。
…爽快ィィーー!!
山頂は10数人が座れる程度のスペース。当然360度全てが断崖で、端のほうにいると
落ちそうで怖いくらいだ。
それだけに鳥肌が立つほどの大展望。
自分の足が地に着いているとは信じられない。完全に航空写真の世界です。


日本アルプスの十字路
10人ほどいた登頂者の隙間を縫って、一番奥にある山頂の祠の前まで行きます。
ここで僕の直前に登頂した人と写真を撮り合います。
祠も断崖のギリギリ、しかも狭いスペースに設置されているのでなかなかスリリング。
真下にには絶景が広がっていました。


山頂の祠
祠には『槍ヶ岳 3180m』と書いてありました。写真じゃわかりませんけど。
オッチャンも登ってきました。お互いの登頂を喜ぶ。
そして僕はしばらく山頂の風に吹かれてこの絶景を満喫します。


肩の小屋を見下ろす
アルプス一万尺「子槍」
穂先から恐る恐る身を乗り出して撮影しました。
このまま落ちていきそうです。
『アルプス一万尺』の歌詞に出てくる"子槍"。
一尺は30.3cmで、一万尺は3030m。当たり前のように知っていたけど、初めて見ました。
でも、あの上でアルペン踊りは不可能ですね。


山頂の人々
カール
くつろいでいると、バラバラバラッ…と機械音が聞こえてきました。
ヘリか!物資を運んできたヤツかな?
…と思ったら、僕らのいる穂先の周りをグルグル周り出した。
そっか、TV局だか新聞社だかの取材へリか!
みんなで「おーーい!!」と叫びながら手を振る。
ヘリの中の人も手を振り替えしてくれ、こちらにカメラを向けてくる。
どっかのメディアに掲載されたのかな?ホントにいいタイミング。いい思い出になりました。



ヘリに手を振る
さて、ちょうど鶴見さんが登ってきたけど、そろそろ降ります。
下りは登り以上に大変でした。下の景色もモロに見なければいけないので怖いし。
でも空いていたので自分のペースでノンビリと降りれました。
14:35 肩の小屋に戻る

穂先を振り返る
ふぅ、緊張したぁ。
じゃあ、眠いのでもう寝ます。明日のための体力を貯めておかないと。
14:45 仮眠
16:50 起床
17:00から第一陣の夕食なので、それに合わせて起きました。
食堂はたぶん200人くらい入れるほどの大きい施設なんですけど、それでも宿泊客数
のMAXが600人以上なので、人数に応じて食事の時間を分けるのです。
オッチャンや鶴見さんと食堂に向かいました。

山荘の夕食
こんな立地なのでおかずはこの程度でしょうがないんでしょうけど、ご飯と味噌汁はお替り
自由です。だからちゃんと満腹になれます。…僕は1杯で充分でしたけど。
それよりも水分の確保が大変ですね。
食事のとき以外は、飲み水がありません。
宿泊客は雨水がタダ、水やお茶がリッター100円だったかな?でも水筒とかの耐熱容器を持
っていないともらえないしね。
自販機のお茶類は一本300円でした。
食後に鶴見さんと外に出て日没を見ます。すでに相当冷え込んでいる。
風も強いし、体感温度は0℃前後でしょう。

夕日に赤く染まる槍
夕日は驚くほどの速さで沈んでいく。
なんだかその夕日を見ていると、秋も深まったんだなぁと思えました。
そして前回しっかり夕日を見たときの、礼文島で見た夕日も思い出しました。
そんな夕日でした。



長い長い1日の終焉
17:31 日没
17:40 仮眠
19:10、隣がゴソゴソしている音で目が覚めました。
「天の川がね、槍の穂先にかかっているんだよ。最高だよ。」
鶴見さんがそう言いながらカメラを準備しています。
おぉ、そりゃ見てみたいな。
僕も鶴見さんと外に出ました。
凍りつくような標高3000mの氷点下の世界。暗闇にボンヤリと浮かび上がる槍の穂先。
…そして、満天の星空と穂先にかかる天の川!
文明から遠ざかっているからこそ見ることのできる、夢のような世界。
しっかりと目に焼きつけ、そして再び眠りに着きました。
20:00 就寝
10月7日
御来光・槍ヶ岳下山
10月6日 A
槍ヶ岳と肩の小屋
10月6日 @
上高地〜グリーンバンド